「とりあえず書いて」では、まず良いものが出ません
Geminiに小説を書かせてみて、こう感じたことはないでしょうか。
- 文章が薄い。描写が表面的で心に残らない
- どこかで読んだような話になる
- 指定した文字数に全然届かない
- 後半になると設定や文体が崩れる
これはGeminiの性能が低いからではありません。手順を踏まずに書かせているからです。
この記事では、Geminiで小説を書くための手順を5つに分けて解説します。プロンプトのテクニック集ではなく、その手前にある工程設計の話です。ここを整えるだけで、出てくる文章がはっきり変わります。
まず現実を確認します
最初に、厳しいデータを共有しておきます。
週刊アスキーが3つのAIに同条件で小説を書かせた検証では、Geminiについて次の結果が出ました。
- 本文で37,388文字しか出力できず、指定文字数に対して約43%の不足
- 3つのAI同士による相互評価で30〜41点(不合格)
- 「行頭のスペースがない」など形式も不揃い
- 内容も「薄い」と評価された
同じ条件でChatGPTは92〜95点、Claudeは80〜86点でしたから、素の状態では差が大きいのが実情です。
ただし、これは何も工夫せずに一発で書かせた場合の結果です。
Geminiの弱点は、ほぼすべて工程設計で潰せます。 むしろ弱点がはっきりしているぶん、対処もはっきりしています。ここから本題です。
手順①:使うモデルを把握する
最初に、自分が今どのモデルを使っているかを確認してください。
2026年10月9日から、Google AIに未加入の無料ユーザーが使えるのはFlash-Liteのみになりました。
| プラン | 月額 | 使えるモデル |
|---|---|---|
| 無料 | 0円 | Flash-Liteのみ |
| AI Plus | 725円 | Flash-Lite、Flash |
| AI Pro | 2,900円 | Flash-Lite、Flash、Pro |
Flash-Liteは速度を優先した軽量モデルです。短い文章の処理には十分ですが、長い物語の一貫性や描写の深さでは上位モデルに届きません。
知っておくべき仕様があります
処理能力を「低・中・高」から選べる設定がありますが、ここに落とし穴があります。
思考レベルを上げても、モデルそのものの能力は上がりません。 与えられた能力の範囲内で、どれだけ考えるかが変わるだけです。
つまり能力そのものを引き上げたいなら、Proに替える以外に方法はありません。 「Flashの思考レベルを高にすればPro相当になる」という理解は誤りです。
ただし無料のままでも、以降の手順を踏めば実用的な出力は得られます。モデルは前提条件であって、決定要因ではありません。
手順②:いきなり本文を書かせない
ここが最も重要な手順です。
多くの方がやってしまうのが、最初のプロンプトで「〇〇という設定で小説を書いて」と投げることです。これをやると、ほぼ確実に薄い文章が出てきます。
理由は単純で、モデルが何も材料を持っていない状態で書き始めるからです。設定が曖昧なまま書けば、曖昧な文章になります。
3段階に分けてください
本文を書かせる前に、2つの工程を挟みます。
第1段階:設定を作らせる 世界観、主要人物の背景、人物同士の関係、物語の舞台。これらを先に出力させて、自分で確認・修正します。
第2段階:プロットを作らせる 物語全体の流れ、場面の区切り、各場面で何が起きるか。ここも自分で手を入れます。
第3段階:本文を書かせる 確定した設定とプロットを渡した上で、場面ごとに書かせます。
この3段階を踏むだけで、出力の質ははっきり変わります。 1段階目と2段階目で、モデルは「材料」を手に入れるからです。
なぜ効くのか
ここには仕組み上の理由があります。
言語モデルは、直前の文脈の続きとして自然なものを出力します。設定とプロットが文脈に入っていれば、それと整合する文章が自然な続きになります。何もなければ、最も平均的で無難な文章が自然な続きになります。
「どこかで読んだ話になる」のは、これが原因です。 材料がないとき、モデルは学習データの平均値を出力します。平均値は、当然どこかで読んだような話になります。
手順③:場面ごとに区切って書かせる
長編を一度に書かせないでください。場面ごと、章ごとに分けて出力させます。
これで2つの問題が同時に解決します。
①文字数不足が解消されます 1回の出力には上限があります。「10万字の小説を書いて」と投げても、物理的に出てきません。先ほどの検証で43%不足したのは、これが原因の一つです。
場面ごとに区切れば、各場面を十分な分量で書かせられます。 結果として全体の文字数も伸びます。
②一貫性が保たれます 場面ごとに「前の場面までの要約」と「この場面で書くこと」を渡せば、モデルが抱える情報量が常に適切に保たれます。
具体的な進め方
1. 前の場面の要約(3〜5行)を渡す
2. この場面で起きることを指定する
3. 書かせる
4. 出力を確認して、必要なら修正指示を出す
5. 確定したら、次の場面へ
面倒に見えますが、一発書きで出てきた薄い文章を手直しするより、はるかに早く終わります。
手順④:設定を定期的に貼り直す
これは知らないと必ずハマる部分です。
会話が長くなるほど、最初に出した指示は効かなくなっていきます。
仕組みの話
チャットでは、毎回それまでの会話履歴がまとめて再送されています。モデルは毎ターン、履歴を読み直して応答しているわけです。
ここで問題になるのが、長い文脈を均等に読めていないという性質です。
2023年の「Lost in the Middle」という研究で定量化された現象があります。情報をコンテキストの先頭から末尾まで移動させて精度を測ると、両端で高く、中央で落ち込むU字型になりました。中央では絶対値で20ポイント以上低下するケースが多いと報告されています。
これを小説執筆に当てはめると、こうなります。
- 先頭 — 最初の挨拶や雑談
- 中央 — 設定・世界観・文体の指示(最も重要な部分)
- 末尾 — 直近のやりとり
最も大事な指示が、最も読まれにくい位置に沈んでいきます。 これが「後半になると設定が崩れる」ことの正体です。
対処法
数往復ごとに、設定を再掲してください。
位置バイアスは「末尾が有利」です。設定を貼り直せば、中央に沈んでいた指示が末尾に戻ります。構造を逆手に取った対処法です。
設定を1枚のテキストにまとめておけば、貼り直しは数秒で済みます。この一手間を惜しむかどうかで、後半の品質がはっきり分かれます。
手順⑤:推敲は別のチャットでやらせる
最後は、意外と知られていない手順です。
書き上がった文章を推敲させるとき、同じチャットで「直して」と頼まないでください。
理由
同じチャットには、モデル自身がその文章を書いた履歴が残っています。その文脈で批評を求めると、自分の出力を擁護する方向に寄りやすくなります。「ここは意図的にこう書きました」といった応答が返ってくるのは、このためです。
新しいチャットを開いて、文章だけを貼り付けてください。
書いた経緯を知らない状態で読ませると、評価がはっきり辛口になります。「描写が抽象的」「この人物の動機が不明」といった、本当に必要な指摘が出てきます。
指示の出し方
推敲を頼むときは、観点を指定すると精度が上がります。
- 描写が具体的か
- 人物の行動に動機があるか
- 場面の転換が唐突でないか
- 同じ表現を繰り返していないか
漠然と「推敲して」と頼むと、漠然とした修正しか返ってきません。
ここまでの手順をまとめると
| 手順 | やること | 解決する問題 |
|---|---|---|
| ① | モデルを把握する | 前提条件の確認 |
| ② | 設定→プロット→本文の3段階 | 文章が薄い/テンプレになる |
| ③ | 場面ごとに区切る | 文字数不足/一貫性の崩れ |
| ④ | 設定を貼り直す | 後半で設定が崩れる |
| ⑤ | 推敲は別チャットで | 甘い自己評価 |
冒頭に挙げた不満は、すべてこの5手順のどこかで対処できます。
さらに質を上げたい方へ
ここまでが工程設計の話です。これだけでも出力は変わりますが、もう一段上があります。
どう指示を書くかという部分です。
同じ「描写を増やして」でも、書き方によって返ってくるものがまったく違います。何を指定して何を指定しないか、どの順番で書くか、どこまで具体的に書くか——ここは手順の話ではなく、指示文そのものの設計になります。
この部分について、当サイトでは実際に使っている指示文を1冊にまとめています。
『Geminiで官能小説を書く方法完全版』(2,980円)
タイトルは官能小説となっていますが、販売ページにも「普通の小説でも使える」と明記しているとおり、全年齢の作品にもそのまま使える内容です。
- 高品質な小説を書く方法 — 薄い文章が出てくる原因と、その解消手順
- 「魔法のプロンプト」の解説 — 実際に使っている指示文の組み立て方
- Gemini歴3年4ヶ月の実践内容をまとめたもの
記事では工程までしか書けませんが、指示文そのものを見たい方はこちらを確認してみてください。
まとめ
- Geminiは素の状態では評価が低い(相互評価30〜41点、文字数43%不足)。ただし弱点はすべて工程で潰せます
- 手順①モデルを把握する — 無料はFlash-Liteのみ。思考レベルを上げてもモデルの能力は上がりません
- 手順②いきなり本文を書かせない — 設定→プロット→本文の3段階。材料がないと学習データの平均値が出てくるので、どこかで読んだ話になります
- 手順③場面ごとに区切る — 文字数不足と一貫性の崩れが同時に解決します
- 手順④設定を貼り直す — 「Lost in the Middle」で示されたとおり、中央の情報は20ポイント以上低下します。設定が中央に沈むのを防いでください
- 手順⑤推敲は別チャットで — 書いた履歴が残っていると、評価が甘くなります
- 工程を整えた先は、指示文そのものの設計の話になります
仕様は頻繁に変更されます。この記事は2026年10月時点の内容ですので、最新の仕様は公式でご確認ください。


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