「安全第一」で遅れて出てきたAIが、最上位に並ぶまで
Claudeを作ったAnthropic(アンソロピック)は、2021年にOpenAIを離れた7人が設立した会社です。最初のClaudeは2022年には完成していましたが、安全性の確認を優先して、公開を2023年3月まで遅らせました。「性能競争をあおりたくない」というのが理由です。
ChatGPTの公開から3か月半遅れでのスタート。そこから3年半で、Claudeは一度に100万トークンを読み、PCを操作し、資料作成を丸ごと任せられるAIになりました。
この記事では、Claudeの歴史を2023年3月の初代から2026年10月まで順にたどり、性能がどう進化し、何ができるようになったかを整理します。
※当サイトの記事作成にはClaudeを使っています。日付と数字は外部の資料で確認しています。
前史:OpenAIからの独立と「憲法」(2021〜2022年)
- 2021年1月:OpenAIで研究部門の副社長だったダリオ・アモデイと、妹のダニエラ・アモデイを含む7人がAnthropicを設立
- 2022年:AIに「憲法」と呼ぶ原則を与え、自分の出力をその原則に照らして直させる**Constitutional AI(憲法AI)**を発表。これが今もClaudeの土台です
- 2022年:初代Claudeの学習は完了。しかし公開は見送り
ChatGPTが「まず出して、使いながら直す」会社の製品だとすれば、Claudeは「確かめてから出す」会社の製品です。この姿勢は、良くも悪くも、その後の歴史全体に影響しています。
転換点①:初代Claudeと「10万トークン」(2023年)
- 3月14日:Claudeと軽量版のClaude Instantを発表。偶然にも、GPT-4の発表と同じ日です。ただし使えるのは承認された企業のみ。一度に読める量は約9,000トークンでした
- 5月:読める量を10万トークンに拡大。当時のChatGPT(GPT-4)の数倍〜十数倍で、「本1冊を丸ごと読ませる」ことができる最初の一般向けAIになりました
- 7月11日:Claude 2。チャット画面claude.aiが米国と英国で一般公開
- 9月:Amazonが最大40億ドルの出資を発表。10月にはGoogleも5億ドル(最大20億ドル)
- 10月16日:claude.aiが日本を含む95か国に拡大
- 11月21日:Claude 2.1。読める量が20万トークン(約500ページ)に
この年のポイントは、「長い文章を読める」という強みを最初から持っていたことです。性能で話題をさらったのはChatGPTでしたが、「長い資料を扱うならClaude」という評価は、この時点で生まれていました。
転換点②:Claude 3で「GPT-4超え」、3.5でArtifacts(2024年)
- 3月4日:Claude 3ファミリー。軽い順にHaiku・Sonnet・Opusの3段構成を導入し、全モデルで画像入力に対応。最上位のOpusは、主要なベンチマークでGPT-4を上回ったと発表され、「GPT-4を超えた最初のモデル」として話題に
- 6月20日:Claude 3.5 Sonnet。中位モデルなのに前世代の最上位を超え、同時にArtifactsが登場。会話の横に、作ったコードや文書、図がその場で表示される仕組みで、「チャットの外に成果物を出す」発想の始まりです。6月25日にはProjectsも
- 10月22日:3.5 Sonnetの強化版と3.5 Haiku。そして**コンピュータ操作(computer use)**をベータ公開。AIが画面を見て、マウスとキーボードを動かす機能で、主要なAIでは最初の試みでした
- 11月:AIと外部のサービスをつなぐ共通規格MCPを公開。後に業界全体の標準になります
この年のポイントは、「追いつく」から「先に行く」への転換です。Artifacts、コンピュータ操作、MCPは、いずれも後に他社が追随する形になりました。
転換点③:Claude CodeとClaude 4(2025年)
2025年は、Claudeが「プログラミングのAI」として強い評価を得た年です。
- 2月24日:Claude 3.7 Sonnet。即答と「じっくり考える」を1つのモデルで切り替えるハイブリッド推論を、主要なAIで初めて実現。同時に、ターミナルで動くプログラミング用エージェントClaude Codeを研究プレビューとして公開
- 3月20日:Web検索に対応
- 5月22日:Claude 4(Opus 4・Sonnet 4)。考えながらツールを使う、長い作業で記憶を保つ、といった「エージェントとしての力」が中心。Claude Codeが正式版に
- 8月:Opus 4.1。Chromeの拡張機能Claude for Chromeをプレビュー
- 9月29日:Sonnet 4.5。コーディングとエージェント性能が大きく向上
- 10月15日:Haiku 4.5。軽量モデルで初めて拡張思考とコンピュータ操作に対応。10月20日にはClaude CodeのWeb版
- 11月24日:Opus 4.5
この年、Anthropicの企業価値は3月の615億ドルから9月の1,830億ドルへと急伸しました。Claude Codeが開発者に広まったことが、会社の成長を引っ張った年です。
この年のポイントは、「書くAI」から「作業するAI」への転換です。ChatGPTが一般ユーザー向けに広がったのに対して、Claudeは「仕事で使う人」「コードを書く人」に深く刺さる方向に進みました。
転換点④:Cowork、そしてMythos級の登場(2026年前半)
2026年は、モデルの世代が一気に進んだ年です。
- 1月12日:資料作成や調査を任せるCoworkを研究プレビューとして公開(Max向け、後にPro、4月9日に正式版)
- 2月5日:Opus 4.6。読める量が100万トークン(ベータ)に。複数のエージェントを組ませる「agent teams」も。2月17日にはSonnet 4.6
- 3月2日:メモリが無料ユーザーにも開放
- 4月7日:Project Glasswing。公開前の最上位モデルMythos Previewを、11の組織に限定提供。Mozillaはこれを使ってFirefoxの271件の脆弱性を修正したと報告
- 4月16日:Opus 4.7。4月17日にはClaude Design
- 5月28日:Opus 4.8
- 6月9日:Claude Fable 5とMythos 5。Opusの上に「Mythos級」という新しい階層ができました。Fable 5は一般向けに安全対策を加えたもの、Mythos 5は限定提供
- 6月12日:米国商務省の輸出規制により、Fable 5・Mythos 5の提供を停止
- 6月30日:Sonnet 5。Opusに迫る性能をSonnetの価格で
- 7月1日:規制が解除され、Fable 5・Mythos 5の提供を再開
この年前半のポイントは、「最上位」の定義が変わったことです。それまでOpusが最上位でしたが、Mythos級が上に乗りました。そして、その最上位モデルが政府の規制で一時止まるという、AIの歴史でも珍しい出来事がありました。
転換点⑤:5.5世代と「先回りするAI」(2026年後半)
- 7月24日:Opus 5。Fable 5に近い性能を半額で
- 9月:Fable 5.1・Mythos 5.1
- 9月16日:Design・Slides・Docsが無料を含む全プランに開放。Coworkがどの会話からでも使えるように
- 9月22日:Opus 5.5。Opus 5より運用コストが40%減
- 9月28日:Sonnet 5.5。30%以上高速、最大30%安く
- 10月7日:Haiku 5.5
- 10月21日:Claude Duet。連携したアプリを定期的に確認し、先回りして動く新しいアプリ(米国のPro・Max向け、待機リスト)
会社の規模も変わりました。2026年4月には年換算の売上が300億ドルを超えたと報じられ、5月には企業価値が9,650億ドルに達しています。2023年に「安全第一で遅れて出てきた会社」が、3年で業界の最上位に並びました。
数字で見る進化
| 2023年3月(初代) | 2026年10月 | |
|---|---|---|
| 最上位モデル | Claude | Fable 5.1(公開)/Mythos 5.1(限定) |
| 一度に読める量 | 約9,000トークン | 最大100万トークン |
| できること | 文章の入出力 | 画像読み込み・Web検索・Artifacts・ファイル作成・コンピュータ操作・Claude Code・Cowork・音声 |
| 使える人 | 承認された企業のみ | 無料で誰でも(日本は2023年10月から) |
| 作れないもの | 画像・動画 | 画像・動画(今も変わらず) |
3年半で、読める量は約100倍、できることは十数倍に増えました。 一方で、画像や動画を「作る」機能は一度も付けていません。 ここはChatGPTやGeminiと最初から違う道を選んでいます。
進化の3つの流れ
- 長い文脈:9K → 100K(2023年5月)→ 200K(2.1)→ 1M(4.6、2026年)
- 成果物を出す:Artifacts(2024年)→ ファイル作成 → Design・Slides・Docs(2026年)
- 作業を任せる:コンピュータ操作(2024年)→ Claude Code(2025年)→ Cowork(2026年)→ Duet(先回り)
ChatGPTが「誰でも使える入口」で、Geminiが「Googleの中に溶け込む」形で育ったのに対して、Claudeは「仕事と開発の現場で、深く使われる」方向に育ちました。 画像も動画も作らない代わりに、文章・コード・作業に集中する。この選択は、初代から一貫しています。
まとめ
- 2021年にOpenAI出身の7人が設立。安全性を確かめてから2023年3月に公開
- 2023年、10万→20万トークンの「長く読める」強みを獲得。10月から日本でも
- 2024年、Claude 3でGPT-4超え。3.5 SonnetでArtifacts、コンピュータ操作、MCPと「先に行く」側へ
- 2025年、Claude CodeとClaude 4で「作業するAI」に。開発者に広まり、会社も急成長
- 2026年前半、Cowork、そしてOpusの上にMythos級。輸出規制で一時停止という異例の出来事
- 2026年後半、Opus 5.5・Sonnet 5.5・Haiku 5.5、先回り型のDuet
- 画像・動画は一度も作らず、文章・コード・作業に集中してきた
この記事は2026年10月時点の公開情報に基づいています。モデルの発表日と提供開始日は分かれていることが多く、資料によって数日のずれがあります。


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